やっぺすが活動する理由と石巻の課題


震災から設立まで


震災が起きた時、石巻では

2011年3月11日、東北地方をマグニチュード9.0の地震と大規模な津波が襲いました。石巻市では震災関連死を含めて3,166人が犠牲となり、434人の行方が分かっていません。東日本大震災による全体の犠牲者のうち、約20%が石巻で犠牲となり、被災面積も広く、最も被害の大きかった市のひとつとなりました。

復興公営住宅の建設が進められていますが、応急仮設住宅と民間賃貸住宅に、26,836人の方々が生活しています。 (2013年12月末日時点)


「やっぺす」という言葉に込められた想い

「やっぺす」という言葉には、石巻地方で「一緒にやりましょう」という意味があります。震災から間もないころは、「復興に向けて頑張ろう」という言葉や一方的な支援に疲れている方が多くいました。被災者として同じ目線で寄り添って活動をしようという意味を込め、やっぺすとしました。このとき、ぬくもりのある石巻に戻って欲しいと願い、ハートをモチーフにした天使「やっぺすちゃん」が生まれました。

現在は、地域や立場は関係なく、一緒にやっていきましょうという想いを込めて、活動しています。


仮設住宅とそこに住む人びとが抱える課題


↑仮設住宅での死因別・年代別孤独死の状況(阪神・淡路大震災 当初3年間)神戸大学都市安全センター研究報告より
↑仮設住宅での死因別・年代別孤独死の状況(阪神・淡路大震災 当初3年間)神戸大学都市安全センター研究報告より

仮設住宅における課題

仮設住宅では、入居先が抽選により決まるため、見ず知らずの方々との生活を共にすることになり、これまであったご近所付き合い等の支え合いの基盤となっていたコミュニティが消失しました。孤立やストレスから来る孤独死やアルコール依存症、家庭内暴力、幼児虐待等が危惧されています。阪神大震災では、200名を超える方が、孤独死・自殺されました。50-60代の男性の肝疾患による孤独死が多いのは、アルコール依存に起因するものと見られています。


復興公営住宅への移行時期を迎え、より手厚いサポートが求められます。

復興公営住宅への移行が数年かけて進みます。それに伴い、仮設住宅団地の集約が進みます。せっかく出来たコミュニティが壊れ、新しい方々との生活がまた始まります。そういった環境で生活される住民の方の精神的負担は増すばかりです。

そもそも、仮設住宅は、自立再建できる元気な方から抜けていくコミュニティです。残る方々は、サポートが必要な方が増えていくので、より手厚い支援が求められています。


これからの復興への課題とやっぺすの役割


復興の踊り場をいかに乗り越えるか

復旧が一段落し、復興計画が実行されるまでの期間は、変化が見えにくい「復興の踊り場」と呼ばれます。この停滞感が、被災された方の精神的な負担を増加させます。また、関心が薄れることで、支援活動を行うことができなくなり、復興が進まなくなります。この復興の踊り場の時期をいかに支えきれるかが今後の石巻の復興を左右します。


子育て環境の整備は後回し。若者の人口流出は、さらなる地域衰退の原因に。

これから10年以上長期に渡り復興を支えていく必要があります。現在の復興への課題は、震災前から存在する地域の課題と密接に関係しています。震災前の石巻は、高齢化やシャッター街、人口流出する地方都市でした。毎年1,000名以上、約1%の人口が減少していました。若者の流出が著しく、少子高齢化も全国平均より15年早く進んでいました。

それに拍車をかけるように、石巻の子育て環境は悪化しており、子育て世代の流出は加速しています。平成24年度の中学生の不登校率は、宮城県は3.14% で全国ワースト1位になりました。狭い仮設住宅での生活や体を動かす校庭や公園が減ったことが関係しています。復興は、まず住宅の再建や産業の復旧等ハード面が優先され、公園や文化施設の整備は後回しにされています。仮設住宅がなくならないと、公園は復旧されません。


↑石巻市における自治会長及びPTA会長の女性会長登用率の推移
↑石巻市における自治会長及びPTA会長の女性会長登用率の推移

これからの石巻に必要な担い手とは?

石巻は、震災前より女性が活躍する機会が少ない社会でした。石巻市における自治会長及びPTA会長の女性会長登用率は、県平均を大きく下回っています。また、若い世代が活躍する土壌が育っていませんでした。特定の人材だけではなく、多様な担い手が育ち、支えあい、みんなで課題を乗り越えてく石巻が、今後の復興において求められます。私たちは、世代や地域、人をつなぎ、担い手を育成していく必要があると考えます。


私たちが果たすべき役割

支援の担い手が減ってきている今こそ、地元の団体が復興を支えないといけません。母親である私たちの視点は、今後の復興まちづくりにおいて、必ず役に立つはずです。石巻市内のネットワークはもちろんのこと、外部の企業やNPO,行政等とネットワークを持つ私たちが長期にわたる復興の中で果たすべき役割は、お互いの強みを活かしながら、支えあうことの出来る社会基盤づくりを構築することだと考えます。


やっぺすは、震災直後からめまぐるしく変わるニーズに答える形で活動を行ってきた結果、

石巻を代表する復興支援団体のひとつになりました。