私たちは、いつ、どこで、突然のけがや病気におそわれるかわかりません。
そのけがや病気の中には、命に係わる、重篤で緊急性の高いものである可能性もあるのです。
心臓の病気や脳の病気などは、なんの前触れもなく突然起こることがあり、ついさっきまで元気にしていたのに
突然心臓や呼吸が止まってしまった、、、こういった状況に陥った人の命を救うために、
そばに居合わせた人ができる応急手当のことを『救命処置』というのだそうです。
石巻消防署の鈴木さんのお話しによれば、去年一年間で救急車の出動要請は石巻広域消防の管轄内だけで8,000件以上もあったそうです。
現代のシステムでも、通報から救急車が現場に到着するまでの時間は平均約9分かかる、とのこと。
心臓や呼吸が止まってから、救急隊が到着するまでの間に倒れた方がどんな手当を受けていたか。
誰も、なすすべがないままただ倒れた方を見守ることしかできなかった場合、
助かる確率は時間の経過とともに下がり続ける一方とのこと。
救急隊が到着するまでの間、助かる確率を少しでも上げるために、何が出来るのか。
その方法を、今回はやっぺすスタッフ全員が学び、実践しました。
まず、倒れた方の命を救い、社会復帰に導くために重要なのは“救命の連鎖”である、ということを分かりやすくまとめたDVDを観ながらその大切さを認識しました。
この救命の連鎖は4つの輪『予防』『心停止の早期認識と通報』『一時救命処置』『二次救命処置と心拍再開後の集中治療』で成り立っていて、この4つの輪が欠けることなく、より早くつながることで救命効果は高くなるそうです。
DVDを観て救命の連鎖の重要性を学んだあとは、3つ目の輪『一時救命処置』を
実践して身に付けます。
脳は、心臓が止まると15秒以内に意識が無くなり、3~4分そのままの状態が続くと回復が
難しくなってしまうそうです。
予防に努めることが最も重要ではありますが、何らかの原因で倒れてしまった場合、2つ目の輪である
『心臓が止まってしまっているかもしれない』とそばにいる方が早くに認識し、救急車の要請をする事、
そして救急車が到着するまでの間に、『胸骨圧迫』を施し、止まってしまった心臓の代わりを担うことが重要とのことでした。
スタッフ全員が、ひとりひとり、この『胸骨圧迫』の方法を人形を使って練習します。
まずは、石巻消防署の鈴木さんが実践し、お手本を見せてくださいます。
足は肩幅ほどに開いて膝をつき、つま先は立てるのがポイント。
さらに肘は伸ばしたまま、目線は前方へ置き、胸骨を圧迫していきます。
この姿勢を保って胸骨圧迫をすると、疲れにくいうえ的確に圧迫をすることができるそうです。
30回、一定のリズムで胸骨圧迫をし、2回口から肺に息を吹き込む人工呼吸をする。
この30:2のサイクルを、救急隊が到着するまで、もしくは倒れた方が意識を取り戻すまで絶え間なく続けます。
倒れた方の発見から周りに助けを呼ぶ→来てくれた方へ119番への通報とAEDを探して持ってきてほしいとの
声がけ→倒れた方の様子を確認(ここでは意識・呼吸ともに無しと仮定)と胸骨圧迫・人工呼吸、、、と一連の流れを実践しました。
胸骨圧迫と人工呼吸のところでは、1人が30:2のサイクルを5回、やってみましょうと消防署の方から
声がけがあり、取り組みました。
今回はたった5回のサイクルの実践でしたが、5サイクル目を終えるとどっと疲れが出ました。
実際の現場では、5回のサイクルでは済まないかもしれない、、、と思うと、
その場に居合わせた人の中で、より多くの方が救命処置の方法を知っていて、
さらに実際に処置できる技術を身につけていてほしい、と思いました。
止まった心臓の代わりになる胸骨圧迫法、やはり一人で救急隊が到着するまでの時間、続けようとすると
かなりの体力を消耗します。
1人でも多くの方がこの技術を身に付けていれば、交代で処置を施すことが可能になります。
その結果、倒れた方の命が救われ、社会復帰につながるとしたら、、、
消防署の方のお話しにもありましたが、なかなかこの救命処置が広がらない、と。
ぜひもっと多くの方々に広まり、誰でも躊躇することなく命を救うための行動が出来るようになればいいなと思いました。
小休憩のあとはAEDの使い方を教えていただきました。
AEDは、心臓が突然止まる多くの原因となる「心室細動(心臓が細かくブルブルと震える)」を取り除くために
電気ショックを与えるための機器です。
最近ではとても使いやすく工夫されているとのことで、実際にふたを開けてみると、細かい指示が
機器から流れてきました。
誰が開けても、使えるように工夫がされているそうで
機器の説明を受けた後は、3人一組になって通報から救命処置、AEDの取り付け、電気ショックの実施まで一連の流れを行いました。
全員が全ての役を実践したのち、最後に『止血法』と『異物除去法』を教えていただき、3時間の講習を修了しました。
石巻消防署の鈴木さんからは、今回受講したことにより、もしもの場面に出会った場合はぜひ
迷うことなく救命処置をしていただきたい、ただ、実践しないと忘れてしまうので、(実際に使うことは無い方が良いのですが)
“もしも”の場合に備えて、1年に1回でも2年に1回でも良い、また定期的にこのような機会を設けてぜひ
私たちを呼んでいただければ、いつでもご指導はできます。
と、力強いお言葉をいただきました。
日々過酷な現場をこなされている消防署の職員の皆さんは、今回お話しいただかなかった辛い現場もたくさん
経験されていると思います。
そんな現場をたくさん経験されている職員さんだからこそ、地域の方々みなさんに『心停止の予防』に努めてほしい、
とおっしゃった一言にとても重みがありました。
長丁場の講習でしたが、スタッフ全員真剣に取り組み、あっという間の3時間でした。
最後にスタッフひとりひとりへ、普通救命講習を修了したという証にカードをいただきました。
実際の現場のお話を交えながら、丁寧にご指導いただきました石巻消防署の鈴木さん、櫻井さん、今回は本当に
ありがとうございました!